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「ヴェールを被った幽霊」の意匠はどこから来たのか

『FGO』のゴーストは『ドラゴンズクラウン』のゴーストに見てくれが大変よく似ている。パクリではないだろうか」という主旨で2016年1月ごろに騒然となった「ヴェールを被った幽霊」モチーフの由来を探ってみたいと思います。
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図:Twitterアカウント「FGOモンスター真偽再検証 @shingi_kensho」で2016年9月に作成した再検証画像。

 
「ヴェールを被った幽霊」の意匠自体は『ドラゴンズクラウン』以前から古今東西の作品に登場するものです。
50年前開設の米国ディズニーランド『ホーンテッドマンション』の「花嫁幽霊」の例を出せば、『FGO』ゴーストへの「パクリ認定」は無理筋という結論でおおよその決着が付くでしょう。

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ですが、『FGO』『ドラゴンズクラウン』両作品のゴーストのヴェールの造形やゴースト部分の造形がほぼ別物であることを提示しても、「ぱっと見が酷似しているように見える」という視覚の既視感を理由に、疑いを捨てられない方もいらっしゃるのではないかと思います。

なので、もう少し詳しくモチーフ解説を行おうと思います。

 

 



まず、前提として『ドラゴンズクラウン』は、有名な絵画のパロディを筆頭に、古今東西のオマージュをふんだんに取り入れた作風であり、登場するモンスターの多くも古典をモデルに造形されていることを頭に入れておいて下さい。

『ドラクラ』内の名作パロディ解説はネット上に幾つか有りますので、リンクを以って説明に代えさせていただきます。

『ドラゴンズクラウン』元ネタ紹介サイト

Dragon's Crown ドラゴンズクラウン 攻略まとめwiki@2ch  元ネタまとめ
https://www55.atwiki.jp/dragons-crown/pages/83.html
.
This Dragon’s Crown Trailer is Full of Epic Homages
(意訳:『ドラゴンズクラウン』予告トレーラーは古典のオマージュで溢れている)
http://art-eater.com/2013/03/from-mickey-mouse-to-jesus-the-latest-dragons-crown-trailer-is-full-of-epic-homages/comment-page-1/



さて、『ドラゴンズクラウン』でこのゴーストが登場するマップ「死者の城の地下墓所」は、「疫病で亡くなった領主の城跡を改築した地下墓所」という設定の、中世のペスト流行をモデルにしたと思われるステージです。

『ドラクラ』にはトレジャーアートと呼ばれるCGが報酬に貰えるクエストが存在しますが、

『ドラクラ』の「死者の城の地下墓所」ステージでは
中世のペスト禍を背景にした実在の芸術作品群「死の舞踏」(死の舞踏-Wikipedia 参照)を彷彿とさせる踊るガイコツのトレジャーアート『死の舞踏』が入手できます。

トレジャーアート『死の舞踏』入手条件がゴーストとの面会、「死者の城の地下墓所」のボスが鎌を持った骸骨の死神になっていることからも、『ドラクラ』ゴーストのデザインやその背景にも、ペスト禍や中世の芸術作品群「死の舞踏」の存在がある可能性が非常に高いと推測されます。

実際の「死の舞踏」や、清教徒の墓などに見られる意匠(メメント・モリ)などの画像を幾つか提示します。

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これらの意匠を半透明に透かせただけでも『ドラクラ』ゴーストのような「透けた布を被った骸骨幽霊」に近似することがお分かりになると思います。

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『ドラクラ』ゴーストは床まで届く一枚布を引きずっているかのような動きをします


死の舞踏 (美術) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E3%81%AE%E8%88%9E%E8%B8%8F_(%E7%BE%8E%E8%A1%93)
メメント・モリ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A2%E3%83%AA





さて、『FGO』の原作『Fateシリーズ』にも、ペスト禍のような「病」と縁の深いサーヴァント(『FGO』における戦闘ユニット)が存在します。
成田良悟氏が2008年にプレ版を上梓した『Fate/strange fake』に登場する、病魔や細菌の概念を擬人化したサーヴァント「ペイルライダー」です。

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『fake』におけるペイルライダーは人型の影に細菌を思わせる紋様が入ったデザインですが、絵画における「黙示録の四騎士」 ペイルライダーの容姿がこちら。
白い布を纏ったスケルトンの姿になっています。

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『FGO』登場モンスターは概ねRPG定番の架空生物ですが、実装済み~実装予定の「Fate」サーヴァントに縁があるものも少なくありません。
ギリシャ神話由来のFGOモンスター・キメラ、アマゾネス、ケンタウロスを例に挙げますが、キメラは英雄ベルレフォーンが倒した怪物(Fateメドゥーサの宝具「騎英の手綱」の由来)ですし、アマゾネスはヘラクレス、アキレウス、(アステリオスを討伐した)英雄テセウスなどに縁があります。ケンタウロスはそのまんま『Fate/Apocrypha』のケイローン先生の実装を見越して実装されたものでしょう。

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『FGO』ゴーストは「病(細菌)」の概念を擬人化したFateサーヴァント「ペイルライダー」実装を想定してデザインされたものだと仮定すると、

『ドラゴンズクラウン』も『FGO』も中世のペスト禍を背景にした芸術作品群「死の舞踏」や「メメント・モリ」をモデルにしてゴーストエネミーをデザインしているという仮説が成り立ち、両作品のゴーストデザインが似通っている理由にもある程度スジのある説明がつけられます。

『FGO』ゴーストの「脊髄以外の下半身パーツが消失した空飛ぶスケルトン」という特徴も、海外のクリーチャーデザインHOWTO本で作例として紹介されるぐらいには典型的な造形のようです。

ファンタジーの世界を描く - アンデッド編 -: Keith Thompson, 加藤 諒
https://www.amazon.co.jp/dp/4862460674/

https://www.borndigital.co.jp/book/wp-content/blogs.dir/3/files_mf/134762770812198271611861173043.jpg